なぜ、あなたのオウンドメディアは響かないのか?
~企業が見直すべき"情報発信"の本質~
2025.06.16
#Webサイト運用
「社内で"とりあえずブログを始めよう"と言われたけれど、正直、何を書けばいいのか分からない......」そんな戸惑いを感じたことはありませんか。定期的に更新しているのに読まれない。成果が見えない。──それ、原因は"中身"ではなく"そもそもの設計"かもしれません。
Editing by Kimura Akira
オウンドメディアとは何か?
「オウンドメディアって、自社で運営するブログや情報発信サイトのことじゃないの」。そんなイメージを持つ方も多いかもしれません。確かに、大きくは間違っていません。しかし、本質をつかむためには、もう一歩だけ踏み込んで考える必要があります。
オウンドメディアとは、広告のように掲載枠を買うわけでもなく、SNSのように他社の仕組みに依存するわけでもない、「企業が自らの土俵で、自分たちの意思で発信できる場」のことを指します。つまり、発信の内容もタイミングもすべてコントロール可能な、自社の「情報資産」なのです。
広告は一時的な借り物の場。SNSは他者のアルゴリズムに左右される流動的な場。それに対してオウンドメディアは、企業の"声"を蓄積し、整理し、検索され続ける可能性を持つ「アーカイブ型の発信基盤」です。型にはまったカタログスペックな情報や短期のキャンペーンとは異なる、企業の"デジタル人格"をかたちづくる存在ともいえます。
だからこそ、オウンドメディアは"育てるもの"です。一度作って終わりではなく、時間をかけて少しずつ価値を積み上げていく。読者にとって「信頼できる情報が得られる場所」となって初めて、その役割を果たし始めます。売上への即効性が見えにくいからこそ、成果を焦らず、長期的な"資産"として育てていく視点が求められます。
オウンドメディアは、単なるブログではありません。企業が「どう見られたいか」ではなく、「どう伝わっているか」が問われる場。その認識を持ってこそ、ようやくスタートラインに立てるのです。
企業サイトとオウンドメディアは分けて考える
企業のWebサイトを運営していると、「この情報も載せて」と各部署から次々と要望が届きます。商品情報、プレスリリース、IR資料、CSR活動......。その結果、企業サイトが"伝えたいことの詰め合わせ"になってしまっているケースは珍しくありません。ここで改めて意識したいのが、企業サイトとオウンドメディアの役割の違いです。
企業サイトの主な役割は、会社の「正確な情報」を整理して届けることです。事業内容、製品情報、採用ページなど、いわば"会社案内"の延長線上にある存在。訪れた人に情報を伝え、信頼性を担保するための場です。
一方、オウンドメディアは企業が主語ではなく、「読者」が主語になる場です。自社商品について語る前に、まずその商品が向き合う社会課題や、業界の悩みとは何かを伝える。あるいは、ユーザーが抱える疑問に対して、広告色を抑えて丁寧に答える。そうした「共感の入口」こそが、オウンドメディアの強みです。
つまり、企業サイトは「信頼を獲得する場」。オウンドメディアは「関心を引き、関係性を築く場」。初めて企業を知ったユーザーがいきなり商品情報に飛びつくことは稀です。まずは関心を喚起し、理解を促し、信頼を育てていく。オウンドメディアは、その"認知のプロセス"を担う存在なのです。
すべてを企業サイトで伝えようとすれば、情報の文脈がぼやけます。一方、オウンドメディアで製品スペックばかり語れば、読者にとっては"広報室の日記"のような印象になりかねません。両者の役割とトーンを明確に使い分けることで、情報はより届きやすくなり、企業への信頼も自然と深まります。
うまくいかないオウンドメディア、3つの誤解
オウンドメディアを始めたものの、「反応がない」「数字が伸びない」「社内の熱量が落ちてきた」といった悩みを耳にすることは少なくありません。その裏には、オウンドメディアに対する誤解が潜んでいることが多いのです。ここでは、よくある3つの誤解を挙げてみます。
一つ目は、「更新を続けていれば成果が出る」という思い込みです。ただ記事を投稿するだけでは読まれません。誰に向けて、どんな価値を届けたいのか。その設計が曖昧なままでは、内容が"自己満足"で終わってしまいます。数ではなく、中身。読者の関心や検索意図にどれだけ寄り添えているかが鍵となります。
二つ目は、「SEOのために書いている」という誤解です。検索からの流入は重要ですが、キーワードを詰め込んだだけの記事では、検索エンジンにも読者にも届きません。そもそもSEOは、価値ある情報を提供した"結果として"評価されるもの。目的と手段を取り違えてはいけません。
三つ目は、「広報活動のついでに運営している」という状態です。イベントの報告や社内ニュースが並ぶだけでは、読者の関心は引けません。オウンドメディアは掲示板ではなく、企業と社会との接点を築く場。読者に"意味のある発信"となってこそ、価値が生まれます。
オウンドメディアは、短期的な売上を狙う施策ではありません。だからこそ、正しい"前提"を持って運営することが不可欠です。誰に、何を、どう届けるのか。まずはその問いに向き合うこと。それこそが、遠回りのようでいて、最も確かな近道です。
それでも、オウンドメディアに取り組むべき理由
オウンドメディアは手間がかかります。すぐに結果も出ません。それでも、多くの企業が挑戦を続けるのはなぜでしょうか。その理由は、オウンドメディアが「育てる資産」であり、「未来につながる信頼関係」を築く場だからです。
変化の激しいデジタル環境では、広告の効果は一時的。SNSはアルゴリズムに翻弄されがちです。そんな中で、自分たちでコントロールできる発信の場。それが、オウンドメディアの最大の"存在意義"です。記事が検索経由で読み継がれ、数年前のコンテンツが今も問い合わせにつながっている。──それは、他のチャネルにはない"積み重ねの力"です。
さらに、オウンドメディアは集客だけでなく、企業の思想や姿勢を伝える場所でもあります。スペックだけでは伝わらない価値観、ストーリー、社会課題への向き合い方。そうした"企業の人格"が伝わることで、価格や機能では測れない信頼が育っていきます。
この影響は、採用や営業、広報にも広がっていきます。「あの記事を読んで共感しました」「御社の考え方に惹かれて連絡しました」。そんな声が社内に届きはじめたとき、オウンドメディアの意義はぐっとリアルになります。
かつて、名だたる企業が"オウンドメディア"を立ち上げ、音もなく消えていきました。それを揶揄して、「失敗すらしないオウンドメディア」と評された一時期もあります。
地味で、すぐには結果が見えにくい取り組みかもしれません。しかし、時間をかけて育てていくことで、企業にとっての"デジタル資産"となり、ブランド価値の土台となっていきます。それこそが、オウンドメディアの持つ本質的な意義なのです。
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